水葬


ああ沈むんだな、このまま沈んで沈んであたしはどこに行くのかな?

体が重い。何もできない。苦しい。水の中は浅い場所では光がキラキラ反射してとても綺麗だけれど、沈んだ先の深い深い闇の中は不気味で怖くて、無音の世界に自分だけが存在していて、ああ、冷たいな、悲しいな、あたしはひとりぼっちなんだ。


魔法使いになって先輩たちのようになろうと頑張った。危険なことだと分かっていた。それでも逃げ出さなかったのは、強い憧れと、両親の死の理由を知ったから。負けたくないって思ったから。

綺麗ごとだと言われるかもしれない、そうかもしれないけど、あたしはこの世界を変えたかった。こんな何の取り柄も無いあたしが、この世界を守る正義の味方になれたんだよ。

最初は迷惑かけてばかりだったけど、みんな優しくて強くて素敵で、憧れの人たちに追いつこうと頑張った。そのおかげでこんなに強くなれた。

けれど、あたしは今日、負けた。もう魔法はつかえないし、このよく分からない世界で一人ぼっちなのは、もしかして死んだのかな。きっとそうなんだ。


水の魔法で助けた命と、それ以上に消してしまった命。この世界はきっと、消してしまった命たちがあたしを憎み引きずり込もうとしているんだ。

あたしが授かった水の魔法で息ができなくなってしまった命たち、その苦しみなんだ。

ごめんなさい、ごめんなさい。水は癒し、美しいものだけれど、大量の水とその勢いは、脅威になる恐ろしいものだ。

あたしの力も、戦って強くなっていつしか脅威となり、癒しではなく傷つけるだけの恐れられるものへと変わってしまったの?ちがう、あたしはそんな、そんな力が欲しくて戦っていたわけじゃないのに。どこで間違っちゃったのかな。

あたしが死んでも、みんなが世界を守ってくれる。あたしが居なくても、瑠璃ちゃんがいる。あたしがいなくたって大丈夫……なのに

どうして悔しいんだろう。どうしてこんなに寂しいんだろう。覚悟していたことなのに。これは戦争でいままでは運が良かっただけなのに。


あたしは、魔法を憎もうとしている?

あたしは、後悔している?


みんなの笑顔が浮かんでは消え、あ、お別れの言葉、伝えられなかったな。そう思ったけれどもうげんかいかな、まっくらだよ。なにもかんがえられない……



わたしのしかいがとじる とき



(お題:選択式御題様)